「このまま社会に出られなかったら、あの子はどうなってしまうのか」。
日々の生活の中で、ふとした瞬間にそんな不安が胸をよぎることはないでしょうか。部屋に閉じこもるわが子の背中を見ながら、かつての自分が歩んできたような「普通の幸せ」を願ってしまうのは、親として当然の情愛です。
しかし、少しだけ肩の力を抜いて、世界で起きている大きな変化に目を向けてみてください。実は私たちが長年信じてきた「安定した将来」の形そのものが、今、音を立てて崩れ去ろうとしています。
そしてその崩壊の先には、不器用で繊細な人間こそが輝ける、全く新しい時代が来ようとしているのです。
その変化は、単なる一過性の流行ではありません。世界経済の権威であるIMF(国際通貨基金)や、世界的な巨大企業であるAmazonの幹部までもが、これまでの労働や雇用のあり方が「待ったなしで」根本から覆るような提言を行っているのです。
彼らが示唆するのは、これまで「安泰」とされてきたホワイトカラー(事務・頭脳労働職)の聖域が、AIによって崩されつつあるという冷徹な現実です。 実際、世界の最先端であるアメリカでは、その衝撃がすでに数字となって表れています。

2025年10月現在、アメリカの新卒失業率は5.8%に達し、前年比で30%も増加しました。かつては勝ち組の象徴であった金融やコンサルティング、法律、ITエンジニアといったエリート職の採用が激減しており、経営学修士(MBA)を持つような優秀な学生ですら、300社に応募して面接に進めるのはわずか3社という厳しい現実に直面しています。
これまで私たちが「正解」だと思っていたルートが、アメリカではすでに通用しなくなっているのです。 この波は、数年遅れて必ず日本にもやってきます(私は2029年春からはっきりと雇用面に現れてくると予想)。というか、すでに変化は私たちの足元まで押し寄せています。日本国内でも、企業がしっかりと利益を出しているにもかかわらず人員削減を行う「黒字リストラ」が広がっており、上場企業41社だけで約1万人が早期退職の対象となりました。
さらにリクルートワークス研究所や三菱総合研究所の予測によれば、2035年には労働需要と供給の大きなミスマッチが起きるとされています。最低でも460万人、最高で1,000万人の雇用が失われると言う令和の就職氷河期の到来が予想されています。
事務職などのホワイトカラーが余る一方で、専門的な技術職や、人々の生活を直接支えるエッセンシャルワーカーは深刻な人手不足に陥るのです。
つまり、今わが子が「普通の会社員」になれないと嘆くことは、世界的な視点で見れば「沈みゆくタイタニックに乗らずに済んだ」と捉えることもできるのではないでしょうか。AIによる激変社会化が示唆する新しい時代において、真に価値を持つのは「AIに代替できない人間らしさ」です。
アメリカでは今、電気技師や配管工などの高度な技能を持つ職人が高収入を得る「ブルーカラービリオネア」という現象が起きており、肉体的な仕事の価値が見直されています。2025年12月4日(木)の日経新聞にもアメリカの会計士がAIによっって職を奪われ「配管工」となったと言う記事が大きく誌面を割いて掲載されました。

このような流れから私はが抱くのは「ひきこもり」という経験そのものが、かけがえのない価値になるという視点です。AIは論理的で正解に近い答えを出すことはできますが、「挫折の痛み」や「孤独な夜の辛さ」を心から理解することはできません。
ひきこもりを経験し、そこから自分なりのペースで立ち上がろうとする人の言葉には、他者の心に深く響く独自の「物語」があります。
カウンセラーやパーソナルトレーナー、整体師、介護職など、人の弱さに寄り添う仕事において、彼らが持つ繊細さは最強の武器になり得るのです。自分の弱さを知っているからこそ、他者の痛みに共感できる。それはAI時代において、何物にも代えがたい高付加価値な才能なのです。

これからの時代、「いい学校、いい会社」をゴールにする昭和的な人生ゲームは終わりを迎えます。
だからこそ、親御さんにお願いしたいのは、焦って「1日でも早く!」と古い価値観での就労就学を促すことは逆に危険かもしれないのです。
お子様を社会を駆動させる「歯車(それ)」として見るのではなく、かけがえのない「あなた(汝)」として、ただその存在を無条件に肯定してあげてください。
家が心休まる安全基地であれば、子どもは必ず自分のタイミングで、自分に合ったやり方で動き出します。世界が注目するこの大転換期こそ、 わが子の持つ「弱さ」や「優しさ」が大きな希望であることを、どうか信じてあげてください。
ますだともひこ
コメント